100年の時を超えて、トゥーゲンハット邸が教えてくれたこと。
先日、チェコ・ブルノにある「トゥーゲンハット邸」を訪れる機会をいただきました。
ミース・ファン・デル・ローエによって1930年に設計されたこの邸宅は、モダニズム建築を代表する住宅として世界遺産にも登録されています。
残念ながら今回は内部に入ることはできず、外観とテラスからの見学のみでした。
外から見ただけで、十分にこの建築が持つ“本質”のようなものに触れた気がしました。
ファサードはとても静かで簡素。
けれど、その構成や素材の選び方、プロポーションからは、設計者の強い意志が伝わってきます。
そして何より印象的だったのは、建物の背面に広がるテラスとそこからの眺め。
高低差のある敷地を最大限に活かし、緑と建築が美しく調和している様子は、ただ「きれい」という感想ではとても足りません。
空間の抜けや光の取り込み方、自然とのつながり方は、まさに現代建築に通じるものがあり、
「これが100年近く前につくられたのか」と、言葉にならない感動が込み上げました。
室内に入れなかったからこそ、建築を“外から観察する”という純粋な体験ができたのかもしれません。
写真で見るのとはまったく違う、静かな迫力と気配。
これこそが、建築という存在が持つ力なのでしょう。
私たちが日々手がけている住宅も、年月を経ても人に感動を与えられるものでありたい。
トゥーゲンハット邸のように、構造や素材、敷地との関係を丁寧に読み解きながら、
「暮らし」と「思想」が一体となる住まいを目指したいと、あらためて思わせてくれた訪問でした。