家具工房で家を丸ごとオーダーメイドすると? 葉山K邸

外観

2018年7月に完成現場見学会を開催した葉山のK邸は、実は家一棟丸ごとオーダーメイド家具の工房が設計を担当した、初めての注文住宅です。

夫婦2人で営む家具工房HALF MOON FURNITURE WORKSHOPと弊社は、彼らが工房を構える前からの古いお付き合い。「完成した時がピークではなく、使う人が楽しんで使っていける、古くなるほどに愛せる家具を」という考え方が弊社の家づくりと共鳴し、ものづくりへの愛情にあふれる彼らに、弊社事務所の什器をすべてお任せしたのが仕事の始まりです。

今回の葉山K邸は、そんなHALF MOON FURNITURE WORKSHOPの小栗夫妻から、施主であるKさんご一家を紹介していただき、プロジェクトが立ち上がりました。

初めての打ち合わせから家が完成するまでの出来事、進行中に感じたこと、住み始めてからのことなどを、施主K夫妻にインタビューすると同時に、家のすべてを手がけたHALF MOON FURNITURE WORKSHOPにも、作り手としての視点をインタビューしました。

1つの家をめぐって紡がれた2つのストーリーをご紹介します。

想いをすべて叶えてもらった家

玄関ドアを開けたとたんフワッと新しい無垢の木の匂いに包まれるK邸で、ご主人(37)と奥様(34)、息子さん(2)の暮らしが始まってから約1ヶ月。もともと奥様は葉山が地元で、家を建てるならご両親も近くにいるこのエリアと決めていました。そんな奥様のお母様と、HALF MOON FURNITURE WORKSHOPの小栗崇さんのお母様が、昔からの親友だったというのがこのご縁のきっかけです。

K夫妻にとっても、もちろん初めての家づくり。どんな家にしたいとイメージしていたのでしょうか?

ご主人1階に広いリビングがほしかったんです。今までのマンションでは持てなかった、庭と一体になるような開放感のあるリビングがいいなと。1日の中で家族がいちばん多くの時間を過ごすので、気持ちのいい場所にしたかった。

それから和室もほしかった。ゲストが来たら泊まってもらえますし。あとは高気密・高断熱で室内の温度がすぐに変わってしまわないことと、車2台分の駐車場を確保すること。必須の要件として考えていたのはそのくらいで、それ以外はHALF MOON FURNITURE WORKSHOPさんがいろんな提案をしてくださいました。この家づくりで、私たちは我慢や妥協をした記憶がないんですよ。一言で言うなら、想いをすべて叶えてもらった家です。

どこから家を決めて行った?

奥様まずはイメージを共有するところ。切り抜きなどを利用して。私たちはわりとモダンな感じの、床が白っぽくて家具がこげ茶、というイメージを持っていました。でもあんまり白すぎると長年住むうちに飽きがくるかもというアドバイスも頂いて、程よい明るさのオークの無垢の床になりました。家具はウォールナットなんですが、これは木片のサンプルをいろいろ見せて頂いた中で色が気に入って。

ご主人具体的にはいちばん最初に駐車場の位置を決めて、そこから間取りを決めていきました。いくつかパターンを出してくださって…庭の方に和室があるパターンとか。でも、庭との一体感のある広いリビングを優先して今の間取りにしました。

嬉しかった驚きの提案

ご主人:和室をこんなに良くしてくれたのは想像以上でした。和室がほしいと言っただけなのに(笑)この建具も作ってくれたんですよ。座りやすいように掘りごたつにまでしてくれて。こたつもほしかったんですけど、リビングに置くのはちょっとな、と思っていたんです。

奥様間接照明は私たちでは全然思いつかない!玄関を入ってすぐの正面の壁をあえて天井までにしないで途中で止めて、そこに照明を入れるとか、キッチンの戸棚の上に光が出るようにするとか。この家に越してからリラックスしてよく昼寝をしてしまうんです。遊びに来た友達もそう(笑)

ご主人階段の所の天井にトップライト(天窓)を付けようと言ってくれたのも良かったですね。最初のプランではなかったんですが、今となってはあるのとないのとでは家の中の明るさが全然違うと思います。そういうのも私たちでは分からないですから。

奥様2階の壁紙の色も一部だけ薄い水色にしようと提案してくれました。私たちは全部白で良いと単純に考えていたんですけど、2階の書斎部分の紺色と一緒に「このスペースは船のイメージだから水色にしましょう。ここは葉山だから」って。それが良いアクセントになっています。

世界に1つだけ、すべてが自分たちのためだけに作られている

家が出来上がり、実際に住み始めて、K夫妻はどんなことを感じていらっしゃるのでしょうか?

ご主人住む前とのギャップは感じないですね、イメージ通り。やはり全体の統一感が気持ちいいです。家具でも、何かのパーツでも、どれ一つ浮く感じがなく一体感があるのは、HALF MOON FURNITURE WORKSHOPさんに全部を作って頂いたからじゃないでしょうか。

奥様遊びに来た友達にも、家具が全部作り付けなのが羨ましいと言われます。キッチンのちょっとした引き出しやタオルハンガーなど、設計した小栗久美子さんの心配りで工夫してくれているんです。収納も隙間を無駄にせずにたくさん作ってくれて。機能的で落ち着く家になりました。

ご主人ゼロから全部決めて行った家ですから、家のすべてがオーダーメイドなんです。世界で1つだけ、他の誰のためでもない、私たちだけのために作られた家に住める満足感は大きいです。家づくりで大事なのは、人間的にも心から信頼できる建築家さんや工務店さんに出会うことだと思います。私たちはその点でとても幸運だったと思いますね。

K夫妻の家づくりの成功のポイントは、自分たちにとって外せない要件だけをしっかり抽出し、好みを伝えつつも料理の仕方はプロにお任せしながら、柔軟に寛容にプロジェクトを進めて行ったことではないかと思います。そのような信頼関係・相互理解を、打ち合わせの初期段階でしっかり育めたことが全員にとって良かったのではないかと思います。

つくり手インタビュー

だんだんとお客さんとピンが合ってくるのが楽しい

 小栗夫妻が横浜市青葉区の山あいに小さな、けれども居心地のいい工房を構えてから6年。お寺の修繕現場で大工仕事の基礎を体得し、家具屋で数年修行した後に独立した家具職人である崇(たかし)さんと、設計士でありながら自分で手を動かしたくて家具職人になった久美子さんは、この工房でオーダーメイドの家具やインテリア、オリジナル家具などを日々作り続けています。家具職人らしいきめ細かな仕事の確かさと、臨機応変に納期や現場に合わせてくれる彼らは、今ではなくてはならない弊社のパートナーです。

でも、家具職人に家を丸ごと頼むって、一般的にはあまり馴染みのないことかもしれませんね。小栗夫妻にとっても初めてのチャレンジだった今回のプロジェクト、どんなふうに取り組んだのでしょうか?

久美子:ものすごい力の入れようだったと思います(笑)特に上棟までは150%覚醒していたような感じ。楽しかったですね。今回のお話をKさんから頂いた時、いつか家全体をやってみたいと思ってはいましたが、経験がないから最初は尻込みしていたんです。でも場所が葉山だと聞いて、松尾建設さんがいるじゃないかと。良い大工さんがいるのも知ってましたから、それならできるかもしれないとチャレンジさせて頂くことになりました。私たちはふだんから小さな家具でも3〜5回くらいは必ずお客さんと打ち合わせをするんです。家にもお邪魔して、お客さんが言葉にしないような好みや感覚を掴むようにしています。

崇:それこそ木目まで吟味します。例えば木目がワイルドすぎて、どうもこのお客さんにしっくりこないなぁと思ったら、制作の途中で材を変えて1からやり直すこともあります。もちろん納期もあるので調整しながらですが。

久美子:会っていくうちにお客さんの好みややりたいことが分かってきて、片側で自分たちが良いと思うものがあって、全部がだんだんと近づいて行ってピンが合う瞬間というのが来るんです。それが最高に楽しい!

Kさんへのご提案の向こう側にあったもの

 久美子:打ち合わせを重ねる中で、奥様はもともと葉山で生まれ育ったので、最近の「いわゆる葉山っぽい」感じの家は求めていないんだと分かりました。お二人ともモダンな感じがお好きで、床も最初は真っ白なタイルで、という話もあったんです。

崇:それを知った上で、やはり家は長く住むものなので、経年した時に良くなる方向で提案したいと思ったんですね。

久美子:それで、床は明るい無垢のオーク、家具はウォールナットというバランスになりました。空間としては、生活の中で家族が一緒に過ごす時間がわりと多く、でも個人の趣味もそれぞれ楽しんでいて、そういう中で1階でみんなが同じ方向を向ける場所として広いリビングがほしいんだなと。ダイニングテーブルの位置がゲストが来た時などにフレキシブルに変わると感じたので、ペンダント照明にはしませんでした。2階の書斎スペースは、青みを入れてモダンな遊び感を提案しました。ご主人が小屋裏がほしいと仰っていたんです。話を聴いていくと、ほしいのは小屋裏というより秘密基地みたいな「ワクワク感」なんだと気がつき、書斎スペースを持ち上げてその下に収納を設ける提案をしました。

昔の大工の技が残っているのが「家具」の世界 

崇:和室の建具は、格子の細さを1mm単位で吟味しました。あくまでモダンな印象になるように、でも細すぎても反りが出たりするので慎重に。昔の大工さんの、カンナやノミ、組み木などの技術が今でも残っているのが家具の世界なんですよ。

久美子:この建具を実際に家に設置する時、美しく収まるようにするためには独特の取り付け手順があるんですが、最近のふつうの大工さんなら嫌がると思うんです。でも松尾建設の大工さんは、仕上がりを見越して理解してくださって。もともと料理人をしていたベテランの大工さんなんですけど、私より先回りして「これを作ると、次にこういうことが起きる、そのまた次にこういうことが起きる」って、家づくりの要所をさりげなく示唆してくださるんです。随所で助けられました。

「建築」の難しいところ、面白いところ

 久美子:家具も家づくりも、物を作るという手順においては同じなんです。ただ、建築はその土地の自然環境に取り組む、という点が大きな違い。立地や方角、地形、お隣の家の在り方や窓の位置など、その敷地特有の条件があり、全て完璧に読み切るのは本当に難しい。でも、そういういろんな条件の中でベストを見つけていくのが建築の面白いところでもあるんです。Kさんの場合で言うと、南側に開口が取れない中で、いかに家の中に光を取り込むかにいちばん苦心しました。最初はプランに無かった天窓を付けてリビング側に自然光を入れる決断をした時も、そこから午後の最後の光がちゃんと入ってくるかどうか、気になりすぎて現場へ確認に行きました。

モノは誰でも作れるからこそ、人が大事 

今回のプロジェクトを終えて、作り手であるHALF MOON FURNITURE WORKSHOPの小栗夫妻はどんなことを感じているのでしょうか?

久美子:やはり「人に恵まれた」という一言に尽きると私は思っています。施主さんもそうですし、松尾建設さんも、現場の大工さんや職人さんもそう。お互いが誠実に向き合うことで良いものが生まれたなぁと。モノは誰でも作れるんです、技術があれば。だからこそ人が大事。ふだん2人だけじゃできないことを、テンションを同じにして取り組める人たちと一緒にできたことが良かった。

崇:作ってる裏側で想いを込めすぎてるのが見えちゃうとお客さんも息苦しくなると思うんです。でき上がった空間に身を置いたらなんか気持ちいい、そのくらいでいいんじゃないかと思っています。歴史に残るようなものはできないかもしれないけど、そのお客さんにとって他にはない、何にも代えられないものが作れたらと思います。

日々、丁寧に、誠実に、きめ細かくものづくりをしている2人が言うからこそ、「モノは誰でも作れるから人が大事」という言葉が響いてきます。HALF MOON FURNITURE WORKSHOPと一緒に家づくりをしてみたい方、内装や家具のオーダーメイドに関心のある方、まずはざっくばらんに話しましょう!弊社にでも、彼らにでも、お気軽にお問い合わせくださいね。

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